ナショナルファーマコビジランスシステムの発展状態の「4pt分類」

これは、ナショナルファーマコビジランスシステムと、世界中の規制当局のファーマコビジランスのギャップを埋める「eイネーブルメント」技術の役割に関する3部構成のブログシリーズの1つ目です。

国家レベルのファーマコビジランスシステムの典型的な枠組みには、主要な国家規制機関や複数のリージョナルセンター/ナショナルセンターが含まれています。世界保健機関(WHO)は次のように述べています。「ナショナルセンター(NC)は、WHO国際医薬品モニタリング制度に参加している国々において、WHOが承認したファーマコビジランス(PV)センターである。ナショナルセンターは、通常、国の医薬品規制当局の一部であるか、密接に関連している。医療専門家と患者(一部の国において)は、個別症例安全性報告(ICSR)を地域のPVセンターまたはNCに提出していて、後者の場合、報告は、Uppsala Monitoring Centre(UMC)が維持管理しているVigiBase(中央WHOグローバルICSRデータベース)に転送される。」[1]

安全でない医薬品から公衆衛生を高いレベルで守るために、ファーマコビジランスシステムは、最適な機能性を実現できなければなりません。

これまで、ファーマコビジランスシステムの機能を理解するためにいくつかの方法が採用されてきました。ナショナルファーマコビジランスシステムの性能を評価するための代替マーカーとして、これらの方法には様々な要因が使用されています。

WHOは、以下を評価することで、ナショナルファーマコビジランスシステムの堅牢性を測定しています[2]:

  • ファーマコビジランスセンターなどの構造指標、および機能に必要な関連インフラストラクチャ
  • 入手した有害事象報告、報告の完全性、因果関係等に関する処理指標
  • 検出されたシグナル、リスク管理活動、および取られた規制措置の数などの影響指標

米国食品医薬品局(FDA)資金によるプログラム「Systems for Improved Access to Pharmaceuticals and Services(SIAPS)」では、Indicator-Based Pharmacovigilance Assessment(IPAT)ツールを使用して、ナショナルファーマコビジランスシステムを評価しています[3] . このツールでは、以下の5つの主要要素に基づいてナショナルファーマコビジランスシステムを評価しています。

  • 方針、法律、規制
  • 体系、体制、ステークホルダー連携
  •  シグナル生成、データ管理
  •  リスクの評価と査定
  • リスクの管理とコミュニケーション

ファーマコビジランスは、公衆衛生の重要な要素です。国のPV機能を理解するための包括的な枠組みには、上述の直接要因に加えて、国民医療費(GDP%)および人間開発指数などの間接的な健康指標を含めることも必要です。

ある国のファーマコビジランスシステムの発展レベルには、医療費と直接の相互関係があります。

通常、医療費の中央値がGDPの10.1%以上の国には高度なファーマコビジランスシステムがあり、一方で、医療費の中央値が低い国のファーマコビジランスシステムは開発途上にあります(図1)。

図1:ナショナルファーマコビジランスシステムの成熟度の尺度としての医療費.

参照:世界銀行、Global Health Expenditure Database(WHO)、対GDP比として表される医療費(2014年);国:アルゼンチン(AR)、オーストラリア(AU)、ブラジル(BR)、カナダ(CA)、中国(CN)、エジプト(EG)、欧州連合(EU)、インド(IN)、日本(JP)、マレーシア(MY)、ニュージーランド(NZ)、ナイジェリア(NG)、ロシア(RU)、シンガポール(SG)、南アフリカ(SA)、タイ(TH)、アラブ首長国連邦(AE)、英国(GB)、米国(US)およびベトナム(VN)

 

国のファーマコビジランスの成熟度のもうひとつの間接的な指標は、人間開発指数(HDI)です。

人間開発指数(HDI)とは、平均余命、教育、および一人当たりの所得指数の複合統計のことです。HDIは、最高位(HDI=0.9~1)、高位(HDI=0.8~0.9)、中位(HDI=0.5~0.8)、および低位(HDI=0.5未満)に分類することができます。通常、HDIが「最高位」および「高位」の国には高度なファーマコビジランスシステムがあり、一方で、HDIが低い国のファーマコビジランスシステムには十分に開発されたファーマコビジランスシステムがありません(表1)。

表1は、ある国のHDIとファーマコビジランスシステムの発展との間における相関関係の可能性を示す試みです。

表1:人間開発指数(HDI)とナショナルファーマコビジランスシステムの成熟度の相関関係

 

注:欧州連合は、上記の表中で、フランス、ドイツ、イタリア、スペインおよび英国から成る欧州連合の上位5ヵ国として表されています。
Source: United Nations Development Programme, Human Development Reports, 2015

国のファーマコビジランスシステムを評価するための包括的なアプローチが必要です。ここでは、既存の評価システムの範囲を広げて、新しい評価手法を提案したいと考え、「4pt分類」という用語を作りました。この分類には、5つの主要領域が考慮されています。

  • Pharmacovigilance infrastructure (p)
  • Pharmacovigilance related policies, legislature and regulations (p) 
  • Pharmacovigilance outcome such as signal assessment and risk management (p)
  • Public health indicators such as healthcare expenditure, HDI and (p)
  • Technologies for pharmacovigilance (t)

これらの要素を考慮に入れると、各国のファーマコビジランスシステムは、Advanced(高度)(A)、Emerging(発展段階)(E)、およびRudimentary(原始的)(R)に分類することができます。この分類は、ナショナルファーマコビジランスの包括的なイメージを提供し、この基準に照らして評価することで、国のファーマコビジランスシステムのレベルを低い方から高い方へと向上させるのに必要なイニシアチブを促すのに役立ちます。

上述のすべての要素は相互に依存していますが、すべてのコンポーネントに多大な影響をおよぼすことができる重要な要素のひとつは、ITインフラストラクチャです。現代の技術の進歩は、ナショナルファーマコビジランスシステム間のギャップを埋める可能性を秘めています。高度なITシステムは、ヘルスケアシステム(医薬品関連の安全性の問題に関する教育や啓蒙のためのシステムを含む)に組み込まれると、公衆衛生に大きな影響を与える可能性があります。特に、データ管理、シグナル生成、リスク評価およびコミュニケーションに対するファーマコビジランスの体制とプロセスに最新のITシステムを導入すると、ファーマコビジランスシステムの機能に大きな違いをもたらすことができます。

規制当局は、ArisGlobalのLifeSphere® Safetyソリューションを選択することで、発展段階にある規制当局から高度な規制当局へと、バリューチェーンを移行し始めています。8つの規制当局(うち、7つが欧州と北米の規制当局)がArisGlobalの安全性ソリューションをナショナルファーマコビジランスシステムとして使用しています。ファーマコビジランスシステムのこのeイネーブルメントにより、原始的な規制当局システムは、強化された、または高度なファーマコビジランスシステムになります。

2つ目のブログ「ファーマコビジランスにおける現代技術-ナショナルファーマコビジランスシステムが進むべき道」は間もなく公開予定です

[1] http://www.who.int/medicines/areas/quality_safety/safety_efficacy/nat_centres/en/

[2] http://www.who.int/medicines/areas/quality_safety/safety_efficacy/EMP_PV_Indicators_web_ready_v2.pdf

[3] http://apps.who.int/medicinedocs/documents/s21303en/s21303en.pdf